1873年 山梨に生まれる

1887年 「成器舎」生徒とともに。前列中央が一三。

 小林一三は、1873年、山梨県巨摩郡河原部村(現在の韮崎市)で商家を営む「布屋」に生まれた。「一三」の名は、誕生日1月3日に因む。甲府盆地の北西部に位置する韮崎は、甲斐・信濃・駿河を結ぶ諸街道が交わる宿場として栄えた。布屋も手広い商いを代々継いで、本家・分家を構える相応の資産を築いていた。
 ところが一三が生まれた年の夏、母親が亡くなった。婿養子であった父親も実家に戻ってしまう。一三と姉の竹代とは、布屋本家の大叔父夫婦に引き取られた。一三は祖父が立てた分家の家督を2歳で相続し、布屋の一員として大切に養育された。
 1885年、公立小学韮崎学校を卒業した一三は、東八代郡南八代村(現在の笛吹市)の私塾「成器舎」入塾する。自由民権運動の指導者として知られる加賀美平八郎が創った学校で、県内外から生徒が集い、一三も寄宿生となって在籍した。ここで一三は当時の新しい教育に触れ、外の世界へと眼を開いていく。