1953年 有馬稲子、東宝『ひまわり娘』で主演

東宝・宝塚歌劇
1951年 映画『宝塚夫人』ポスター。左上が「宝塚の新星 有馬稲子」

 有馬稲子は養母ともなった伯母から踊りを習い、1948年、宝塚音楽学校に入学。その伯母がかつて宝塚少女歌劇団に出演していたと知ったのは、その後のこと。1949年、宝塚歌劇団36期生として入団し、伯母の芸名「有馬稲子」を襲名する。花組で娘役として、同年の『カルメン』から、1952年の『巴里の騎士/かぐや姫』まで活躍した。
 在団中の1951年、東宝『宝塚夫人』で映画デビュー。映画に専念することとなり、1953年、東宝の専属女優となる。その年、有馬稲子の東宝入社第1回作品として『ひまわり娘』が制作される。原作は、源氏鶏太の小説『向日葵娘』。有馬は主人公の新人OLを好演し、恋人役は三船敏郎。軽妙なタッチで会社・恋愛・日常の一コマを描く。フレッシュな有馬の笑顔が、スクリーンを輝かせた。
 小林一三も、試写会で観た『ひまわり娘』の印象を「おもひつ記」(『歌劇』1953年4月号)に記す。
「まことに明朗な面白い映画であるから嬉しかった。宝塚出身者の誰もが映画に出演すると、多年舞台の錬磨したその手腕力量が現われて、世間でいうところのニューフェースとは比較にならぬほど巧いので、これは、宝塚の誇りとして、私の満足するところである。有馬稲子に限らない。東宝以外のスクリーンに現われる彼女達も、宝塚の名声を発揮しているその功労に対して、私は感謝する。そして、彼女達は必ず再び私の手許に戻って、東宝における宝塚陣営のスターとして、新しい世界に飛躍するものと信じている。」