1956年 ファミリアの東京出店

坂野惇子たちが創業したファミリアは、1951年、大阪の阪急百貨店うめだ本店に初の直営店をオープンした。そして1956年、数寄屋橋の阪急百貨店に2つ目の直営店を出店する。「百貨店として使えるフロアは一階と地階の一部しかないので、百貨店というよりも、専門店風に、なにかの品種にしぼる必要がある。そこで商品構成は子供用品とジュニアの洋服にしぼり'子供のデパート'でいこうと思う。それについて、東京のどこにもないファミリアのベビー子供用品をひとつの目玉商品に打ち出してみようと思う」との相談が阪急百貨店から持ちかけられた。(『ファミリア25年のあゆみ』ファミリア、1975年)
1階フロアの東側一角をファミリアが担当することとなり、直ぐに坂野らは日帰りの飛行機で現場下見に上京。5月29日の開店が発表されたのは21日、準備期間は一週間しかない。坂野らとスタッフが再び上京できたのは24日。徹夜の連続で、陳列ケースや商品を運び込み、飾り付けを進めた。ファミリアのスペースは銀座側の窓際、約50㎡。ショーウインドー3面を持つ、明るい売場が出来上がった。
数寄屋橋阪急はオープンしたが、阪急の名は東京では馴染みか薄い。ファミリアの初日の売上げは20万円、しかし2日目は5万円に落ちた。坂野通夫は「大丈夫だ。良い商品であれば、いまにきっとお母さん方は選んで下さるよ」と言ってスタッフを力づけた。
まったくその通りで「一度使い出すと、ファミリア製品でなければ我慢できないんですよ」と優れた材質や機能性を認めるファミリア・ファンが増えていった。特に大使館員など在日欧米人の家族などからは、総合的に育児用品を揃えたショップとして歓迎された。そして阪急と東宝との関係から、芸能人の顧客も多くなった。
☞現在は阪急メンズ東京が有楽町マリオンにて、男性ファッションに特化したアイテムを取り揃えています。